蜂蜜博物誌

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舞台『虹色唱歌』(2018年)_感想

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2009年に同じ紀伊國屋ホールで上演された作品の再演だそうです。初演は個人的に馴染みの深い入絵加奈子さんや椎名鯛造さんのお名前もあってびっくり。アフタートークで河原田巧也さんもお話されていましたが、舞台らしいテンポの速いセリフ回しが面白いコメディでした。

ベテランの俳優さんたちが多いこともあってセリフの間の長短がとても心地よかったです。幽霊の漫談から物語がスタートする舞台、はじめて観た(笑) 全体的にすごくくだらない感じの笑いだったんですけど、それがとても好きで。賑やかしの寿司屋とか尼さんとかジワジワ愛しい。あとカトリーナの振り切れっぷりがすごい。

三女の梅代役の須藤茉麻さんかわいかったな~!個人的にお久しぶりだったんですけど本当にかわいかった。割烹着ありがとうございました。萌え。三姉妹役の皆さんは三姉妹でありながら「潔子」の憑依先としてのオラオラしたお芝居も見られて二度おいしかったです。憑依されるときのスコーン!ガックン!みたいな演出、おもしろくて好き。キャラクターだったらHIROMUさん演じるミステリアス少年川嶋くんが大好き。

ただ、シナリオはとっ散らかってたかな?という印象。とにかく相関図に関わる情報が多くて観ながら処理するのがたいへん。次から次へと新情報来るし。だいじな設定なのかどうでもいい設定なのか判別つかないし。かと思えば重大な山場にかかる伏線がおざなりだったりして、物語の核になる一本道が見えづらいと感じました。

それからカトリーナの扱いも、うーん。わりとえげつない言葉の壁を標的にしたいじめが明かされたわりには、そんな関係の修復が為されるわけでもなく、彼女は最後まで虹川高校の「唱歌」に加われなかった。「お父さんはあなたのために温泉ファイブを用意したのにあなたは参加しなかった挙句デマクレームで潰したよなコンニャロー」的なこと言われても、カトリーナは自分をからかう集団に媚びてまで仲間にはなりたくなかっただろうし、校長の気遣いに気づいていたかはわからないけど、そんな連中が勝手に盛り上がってるのが恨めしかったんだろうな、と容易に想像がつく。おおよそコメディの作品なんだから「カトリーナとの溝」の原因はあんなにえげつないものである必要があったのかな、と思います。それでやっぱり大団円には彼女も参加してほしかった。みんなが歌ってるあいだもずっとカトリーナのこと考えて胸がチクチクしてたし。

それにしても主役は潔子だと思って観ていたんだけどパンフレット読んだら違った(笑)あと便利づかいされがちな姦しいおばちゃんキャラは女優さんたちが面白く演じてくれるから面白いだけで同じ女としてはステレオタイプでヤな感じ。

シナリオ周りの細かいもったいなさはたくさんあったけど、くだらない笑いはほんとうにくだらなくて大好きだし演出もお芝居も好きなので楽しい観劇でした。「死を乗り越えるのよ」あたりがほんと最高。