蜂蜜博物誌

映画や舞台や読んだ本。たまに思ったこと

舞台『スペーストラベロイド』(2018年)_感想

f:id:gio222safe:20181108124530p:plain

ameblo.jp

遅くなりましたが2018年9月末から10月上旬にかけて上演された『スペーストラベロイド』の感想です。演劇集団イヌッコロの羽仁修さんが脚本を手掛け、2015年と2016年にも上演されたお芝居の再々演。これはもう面白さお墨付きだな!と期待をかけて臨みました。「ごまかし通す、自分のために。」――このキャッチフレーズだけですでにジワジワくる。ぜったいおもしろいやつ。このビジュアル本当に大好きなので部屋に飾ってます。

結論から言えば、テクニカルに練られた脚本がとにかく面白かった。羽仁さんがパンフレットに寄せていた「広大な宇宙で、ものすごく小さな人間関係のトラブルを描いています」そのコメントの通り、一人からはじまったひとつの「嘘」を守るためにやがて大勢の人の嘘と勘違いが積み重なっていく。

ひとつの「嘘」と整合性を図るために新しく生まれていく素っ頓狂な嘘。誤解があっても「嘘」を守るために訂正できず、そのまま加速される勘違い。そのかたわらで組織に属するパイロットたちの真摯な悩みや夢があって、シリアスに転ぶかと思いきや、ほのぼのした誤解がそれを許さない(笑) 登場人物のほとんどが勘違いな状況を受け入れている中で、観客だけが俯瞰してすべてを把握しているシチュエーションが面白いんですよね。久野木さん演じる火野さんがまあかわいい。

一方で本筋を取り巻く「笑い」はあまり好みではなかったのが個人的には残念なところ。見た目イジリとか、ゲイ/トランスイジリとか、現実にあるイジメを想起させてあんまり笑えないんですよね……。見た目イジリに関しては、メイサ役の牧田さんがクソミソ言われるに足る強烈な身体性を持っていたとは言い難く説得力を感じなかった。加えて、元々のメイサが女性型アンドロイドを予定されていたことは 2014年人工知能学会誌表紙を巡って提起された数々の問題点(リンク先:学会誌論文pdf)を思い起こさせて「2050年の発想じゃないな」とさえ思った。そしてセクシャルマイノリティを「笑い」に落とし込む問題点は以下のブログがとても参考になるのでご興味あればぜひ。「火野くんはコレなのかな?(手の甲そらし)」はだいぶキツイ…

www.ishiyuri.com